省エネ適判で指摘される設計会社様が共通して見落としていること(保存版)/非住宅・共同住宅・戸建の省エネ計算。申請・質疑対応まで対応

省エネ適判で指摘される設計会社様が共通して見落としていること(保存版)

省エネ適判で指摘される設計会社様が共通して見落としていること(保存版)

省エネ適判の指摘は「計算が間違っている」だけではない

省エネ適判で審査機関から指摘を受けると、多くの設計会社様は「計算ミスをしてしまったのではないか」と考えます。もちろん、BEIの数値や外皮性能、設備能力の入力ミスが原因になることもあります。しかし実務上、差し戻しや質疑の原因は、単純な計算ミスだけではありません。むしろ多いのは、計算書、設計図書、設備表、仕上表、建具表、申請書類の間で内容が一致していないケースです。

省エネ適判は、単にWEBプログラムの結果だけを確認する手続きではありません。国土交通省の資料でも、省エネ計画には添付図書が必要であり、図書には断熱材の仕様、窓の熱貫流率、各設備の能力など、省エネ基準への適合確認に必要な事項を明示する必要があるとされています。つまり、審査機関は「計算結果が基準を満たしているか」だけでなく、「その計算の根拠が図面上で確認できるか」まで見ています。ここを見落とすと、計算上は適合していても、審査では指摘されることになります。

参照:国土交通省「建築物省エネ法に基づく省エネ基準適合義務制度等に係る手続きマニュアル」

図面に省エネ上必要な情報が書かれていない

審査機関からの指摘内容として特に多いのが、「計算に使っている数値の根拠が図面で確認できない」というものです。たとえば、断熱材の種類や厚み、窓の熱貫流率、日射熱取得率、空調機の能力、換気設備の仕様、照明器具の消費電力などです。設計会社様としては、意匠図や設備図にある程度の情報を記載しているつもりでも、省エネ適判で必要な粒度まで書かれていないことがあります。

日本建築センターの省エネ適合性判定提出要領でも、省エネ基準に適合していることを明確にするため、断熱材の仕様、窓の熱貫流率、各設備の能力等の省エネ基準に係る情報を図面上に明記する必要があるとされています。また、正本・副本に添える設計図書には、作成した建築士の氏名等の記載が必要であり、計画書の設計者欄との整合も求められます。これは意外と見落とされやすい部分です。図面の内容そのものだけでなく、誰が作成した図書なのか、申請書との記載が一致しているかも審査対象になります。

参照:一般財団法人日本建築センター「省エネ適合性判定 提出要領」

提出元の設計会社が見落としている点は、「図面は建築確認用に整っていればよい」と考えてしまうことです。省エネ適判では、建築確認で必要な図面に加えて、省エネ性能を判断するための情報が読み取れる必要があります。たとえば、平面図や立面図に窓の位置が記載されていても、建具表に熱貫流率が記載されていなければ、計算書との照合ができません。空調設備図に機器番号があっても、機器表に定格能力や消費電力が整理されていなければ、入力値の妥当性を確認できません。審査機関が見ているのは「図面があるか」ではなく、「図面から計算根拠を追えるか」です。

計算書と図面の不整合が指摘につながる

省エネ適判で非常に多いのが、計算書と図面の不整合です。モデル建物法や標準入力法では、用途、室用途、床面積、外皮面積、設備仕様などを入力します。しかし、入力シート上の面積や仕様が、意匠図、設備図、仕上表、建具表と一致していない場合、審査機関から確認が入ります。

たとえば、計算書では「事務所」として入力しているのに、図面上では「休憩室」や「倉庫」となっている。計算上は空調対象室として扱っているのに、図面上では空調機が配置されていない。照明設備の入力ではLED器具として整理しているのに、照明器具表の型番や消費電力が確認できない。このようなズレは、設計の初期段階では小さな違いに見えても、省エネ適判では明確な指摘対象になります。

モデル建物法入力マニュアルでも、外皮に係る仕様等の入力は、エネルギー消費量の計算を行ううえで必須であるとされています。また、用途に応じたモデル建物の選択や、入力対象となる設備の整理も重要です。2025年4月以降は、原則すべての住宅・建築物で省エネ基準適合が義務化され、これまで省エネ適判に慣れていなかった小規模非住宅や住宅系案件でも、同じような確認が求められる場面が増えています。

参照:国立研究開発法人建築研究所「モデル建物法入力支援ツール 入力マニュアル」

提出元の設計会社が見落としている点は、設計変更の反映タイミングです。確認申請前後で平面計画や設備仕様が変わったにもかかわらず、省エネ計算だけが古い図面をもとに作成されているケースがあります。図面は最新版、計算書は一つ前の案、設備表はさらに古い案という状態になると、審査機関としては整合確認ができません。省エネ適判では、最新版の図面、計算書、設計内容説明書、申請書の情報がそろって初めて審査が進みます。小さな変更でも、外皮、設備、面積、用途に関係する場合は、省エネ計算への影響を確認する必要があります。

設計内容説明書を「形式的な書類」と考えてしまう

省エネ適判の提出書類の中で、軽く扱われがちなのが設計内容説明書です。設計会社様の中には、計算書と図面があれば十分で、設計内容説明書は形式的に埋める書類だと考えている方もいます。しかし実際には、設計内容説明書は、申請内容と図面、計算結果をつなぐ重要な書類です。ここに記載された内容と計算書、図面が一致していないと、審査機関から指摘を受けやすくなります。

ビューローベリタスジャパンの解説でも、省エネ適判時の申請図書として、計画書、設計内容説明書、計算書、設計図書の明示事項が説明されています。つまり、設計内容説明書は単独で存在する書類ではなく、計画書や図面、計算書と一体で確認されるものです。

参照:ビューローベリタスジャパン株式会社「省エネ適判時申請書類(計画書の書き方、設計内容説明書や計算書、設計図書の明示事項等)」

提出元の設計会社が見落としている点は、「とりあえず前回案件の書式を流用する」ことの危うさです。省エネ適判の書類は案件ごとの用途、規模、計算法、設備構成によって記載すべき内容が変わります。前回の設計内容説明書をベースにすると、不要な項目が残ったり、今回必要な項目が抜けたりします。特に、モデル建物法、標準入力法、小規模版モデル建物法など、どの計算法を使うかによって整理すべき情報が変わるため、書類の使い回しは慎重に行うべきです。

小規模版モデル建物法の適用可否を誤解している

2025年以降、特に注意したいのが小規模非住宅建築物に関する扱いです。モデル建物法には小規模版があり、一定の小規模非住宅建築物では簡易な入力が可能です。ただし、使える条件を正しく理解していないと、申請後に計算法の見直しが必要になることがあります。

ビューローベリタスジャパンの2025年の記事では、モデル建物法小規模版を適用できる建物は300㎡未満の小規模非住宅建築物に限定されると説明されています。また、ウェブプログラム上では面積が300㎡以上でも入力できるため、適用可能な建物かどうかを確認する必要があるとされています。ここは非常に重要です。ツールに入力できることと、制度上適用できることは同じではありません。

参照:ビューローベリタスジャパン株式会社「省エネ基準適合義務制度の改正~非住宅建物の新計算法と注意点」

提出元の設計会社が見落としている点は、「WEBプログラムで結果が出たから問題ない」と判断してしまうことです。省エネ適判では、計算結果だけでなく、その計算法をその案件に適用してよいかも確認されます。小規模版モデル建物法を使えば作業は簡略化できますが、対象外の建物に使ってしまえば、後から通常のモデル建物法や標準入力法への変更が必要になる可能性があります。そうなれば、計算のやり直しだけでなく、設計内容説明書や図面の整理もやり直しになります。これは設計スケジュールに大きな影響を与えます。

設備情報の不足が最後に響く

省エネ適判では、意匠図だけでなく設備情報の精度が非常に重要です。空調、換気、照明、給湯、昇降機、太陽光発電など、対象となる設備の仕様が不足していると、入力値の根拠を示せません。国土交通省のオンライン講座資料でも、設備の性能値は対象機器の機器表や仕様書等から必要な情報を入手し、専用シートに転記してWEBプログラムへ入力する流れが示されています。

参照:国土交通省「改正建築物省エネ法オンライン講座 適合義務制度 ポイント解説」

提出元の設計会社が見落としている点は、設備仕様が未確定のまま省エネ適判を進めようとすることです。もちろん、設計段階では機器型番が完全に決まっていないこともあります。しかし、省エネ計算に必要な能力、効率、消費電力、台数、設置場所、制御方式などが整理されていなければ、審査機関への説明が難しくなります。特に設備設計者、意匠設計者、省エネ計算担当者の間で情報共有が不足していると、図面と計算のズレが起こりやすくなります。

省エネ適判で指摘を減らすには、計算担当者だけが頑張っても限界があります。意匠図、設備図、建具表、仕上表、機器表、設計内容説明書、計算書を横断的に確認し、審査機関がどこを見ているのかを理解したうえで書類を整える必要があります。設計会社様が見落としやすいのは、まさにこの「横断チェック」です。各図書を個別に見ると問題がなさそうでも、並べて確認すると不整合が出てくる。省エネ適判の指摘は、その不整合を突かれることが多いのです。

共通して見落としてしまう内容一覧

審査機関からの主な指摘内容設計会社が共通して見落としている点発生しやすい原因対策
計算書と図面の内容が一致していない設計変更後に省エネ計算を更新していない図面だけ最新版になっている提出前に図面・計算書・設計内容説明書を一括で照合する
断熱材や開口部性能の根拠が確認できない建具表や仕上表への性能値の記載不足建築確認用図面のまま提出している熱貫流率(U値)、日射熱取得率(η値)、断熱材仕様を図面へ明記する
空調・換気・照明設備の性能値が確認できない設備図だけで十分だと思っている機器表や仕様書が添付されていない型番・能力・消費電力・効率を整理した設備表を作成する
室用途と入力内容が一致していない用途変更を計算へ反映していない打合せ後の修正漏れ平面図・求積図・入力シートを同時に確認する
面積やゾーニングが一致しない求積変更後に再計算していない面積変更が共有されていない面積変更時は必ず省エネ計算も更新する
設計内容説明書と計算書が一致しない前案件のデータを流用しているコピー&ペーストによる記載漏れ案件ごとにゼロベースで確認する
採用した計算法が適切ではないモデル建物法・標準入力法の適用条件を確認していない「入力できる=使える」と判断している建物用途・規模・延床面積から適用方法を事前確認する
添付図書が不足している必要書類を把握できていない提出チェックリストがない提出前チェックリストを運用する
建築確認図面と省エネ図面の仕様が異なる意匠・設備・省エネ担当の情報共有不足部門間で図面更新が共有されない提出直前に最終図面で全体確認する
審査機関から追加説明を求められる「審査で説明できる資料」を準備していない計算だけ完成させて提出している根拠資料・メーカー仕様書・カタログを事前に整理しておく

まとめ

省エネ適判で指摘される設計会社様に共通しているのは、計算そのものよりも、計算根拠の見せ方、図面との整合、設備情報の整理、設計変更の反映を軽く見てしまうことです。審査機関は、WEBプログラムの結果だけを見ているわけではありません。断熱材の仕様、窓性能、設備能力、室用途、面積、設計者情報、添付図書の明示事項まで確認しています。

特に2025年4月以降は、省エネ基準適合義務の対象が拡大し、これまで省エネ適判に不慣れだった案件でも、同じ水準の書類整理が求められます。指摘を減らすためには、早い段階で必要図書を整理し、図面と計算書の整合を確認し、設備情報を確定または仮設定する場合でも根拠を明確にしておくことが重要です。省エネ適判は「最後に計算書を添える作業」ではなく、設計図書全体の整合性を確認する実務です。

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