そもそも「省エネ適判の判定員」とは?
省エネ適判とは、正式には「建築物エネルギー消費性能適合性判定」といいます。建築物の省エネ計画について、外皮性能や一次エネルギー消費量などが建築物省エネ法に定められた基準へ適合しているかを審査する制度です。
その審査を実際に行う専門家が「適合性判定員」です。申請者側が作成した意匠図、設備図、省エネ計算書などを確認し、計算条件や設備仕様、図面との整合性などを審査します。日本建築センターなどの登録省エネ判定機関でも、適合性判定員を配置して省エネ適判業務を行っています。
2025年4月からは原則としてすべての新築住宅・建築物に省エネ基準への適合が義務付けられました。それに伴い、住宅を含めて省エネ性能を確認する案件が大幅に増えており、国土交通省も審査体制を充実させるため判定員の養成を進めています。2026年度の判定員講習についても、国土交通省が「審査体制の充実が求められている」として講習開催を案内しています。
省エネ適判の判定員になるには登録講習の修了が基本です
省エネ適判の判定員になる基本的な流れは、「受講資格を満たす→登録適合性判定員講習を受講する→修了考査に合格する」というものです。
建築物省エネ法施行規則では、適合性判定員について、対象となる建築物の区分に応じた資格等を持ち、国土交通大臣の登録を受けた「登録適合性判定員講習」を修了した者などを要件としています。講習は単なる任意の研修ではなく、省エネ適判の判定員として必要な専門知識と技術を習得するための制度上位置付けられた講習です。
ただし、後ほど詳しく説明しますが、「講習を修了した=個人で省エネ適判を営業して受注できる」という意味ではありません。判定業務そのものは所管行政庁や登録省エネ判定機関の制度の中で行われ、登録省エネ判定機関は要件を満たす者の中から適合性判定員を選任します。
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2026年現在は講習A・B・Cの3種類があります
現在の適合性判定員講習で特に知っておきたいのが、資格によって講習区分と判定できる建築物の範囲が分かれている点です。
従来は一級建築士や建築設備士等を中心とした制度でしたが、省エネ基準適合義務の対象拡大に伴い、二級建築士や木造建築士についても、それぞれの資格で扱える建築物の範囲に対応して適合性判定員となれる仕組みが整備されています。2026年度についても講習A・B・Cの3区分が実施されています。
| 講習区分 | 主な受講資格 | 判定業務の基本的な範囲 |
|---|---|---|
| 講習A | 一級建築士、建築設備士等 | 一級建築士の業務範囲に係る建築物 |
| 講習B | 二級建築士、講習Aの受講資格者等 | 二級建築士の業務範囲に係る建築物 |
| 講習C | 木造建築士、講習A・Bの受講資格者等 | 木造建築士の業務範囲に係る建築物 |
つまり、「省エネ適判員になるには一級建築士でなければならない」というわけではありません。二級建築士や木造建築士でも、それぞれ対応する講習を修了することで、資格に応じた建築物について判定業務を行うための要件を満たすことができます。
講習Aの受講資格は一級建築士や建築設備士など
2026年度の国土交通省の案内によると、講習Aを受講できるのは、一級建築基準適合判定資格者検定に合格し一定の実務経験を有する者、一級建築士、建築設備士です。
具体的には次のように整理されています。
| 講習Aの主な受講資格 |
|---|
| 一級建築基準適合判定資格者検定に合格し、対象業務について2年以上の実務経験を有する者 |
| 一級建築士 |
| 建築設備士 |
講習Aを修了した判定員は、一級建築士の業務範囲に係る建築物について省エネ適判を行うための資格要件を満たすことになります。大規模な非住宅建築物やRC造、S造、複合用途建築物なども扱う判定機関で勤務することを考えているのであれば、基本的にはこの区分が中心になります。
二級建築士なら講習Bを受講できます
講習Bは、二級建築士等を対象とした区分です。2026年度の場合、二級建築基準適合判定資格者検定に合格し一定の実務経験を有する者、二級建築士、または講習Aの受講資格を持つ者が対象となっています。
これによって、一級建築士でなくても省エネ適判の判定員を目指せるようになっています。ただし、講習Bを修了したからといって一級建築士の業務範囲に当たるすべての建築物を判定できるわけではありません。適合性判定員として扱える建築物についても、二級建築士の資格による業務範囲を踏まえた区分になっています。
この点は資格取得を検討している方にとって非常に重要です。「判定員資格を取れるか」だけではなく、「取得した後にどの規模・用途の建物を判定できるのか」まで確認して講習区分を選ぶ必要があります。
木造建築士でも講習Cを受講できます
講習Cは木造建築士等を対象とした講習です。木造建築士のほか、講習Aまたは講習Bの受講資格を持つ人も受講できます。講習Cを修了した場合は、基本的に木造建築士の業務範囲に係る建築物について適合性判定を行う資格要件を満たすことになります。
2025年4月から新築住宅についても省エネ基準への適合義務が本格化したため、戸建住宅などを審査できる判定員の確保が重要になっています。住宅分野を中心に業務を行っている木造建築士にとっても、省エネ性能に関する専門知識を深めながら新しい業務領域へ進める制度になっていると考えられます。
現在の制度をまとめると、「一級建築士でなければ省エネ適判員になれない」のではなく、一級建築士、二級建築士、木造建築士等が、それぞれの資格に応じた範囲で判定員を目指せる仕組みになっています。
講習では何を勉強する?
登録適合性判定員講習の内容は、法令によって一定の基準が定められています。建築物省エネ法施行規則では、講義科目として「法の概要」「建築物エネルギー消費性能適合性判定の方法」「例題演習」が定められています。
| 講義科目 | 法令上の講義時間 |
|---|---|
| 建築物省エネ法の概要 | 60分以上 |
| 建築物エネルギー消費性能適合性判定の方法 | 150分以上 |
| 例題演習 | 60分以上 |
合計すると最低270分、つまり4時間30分以上の講義となります。その後に修了考査が実施され、判定員として必要な建築に関する専門知識と技術を習得しているかが確認されます。
省エネ計算の実務を行っている方であれば、WEBPROなどによる一次エネルギー消費量計算や外皮性能について一定の知識を持っていると思います。しかし判定員は「計算する側」ではなく「提出された計算結果が適切かを審査する側」です。そのため、計算方法だけでなく、図面と計算書の整合、入力条件の妥当性、法令上の取り扱いなどを理解しておく必要があります。
修了考査に合格すると講習の修了証明書が交付されます
講義を受けただけでは講習修了とはなりません。講義終了後に修了考査があり、これに合格する必要があります。法令上も、修了考査は「適合性判定員に必要な建築に関する専門的知識及び技術を修得したかどうか」を判定できる内容とすることが定められています。合格者には修了証明書が交付されます。
一般財団法人住宅・建築SDGs推進センターでは過去の修了考査問題も公開しているため、これから受講を検討している方は一度確認してみると試験のイメージをつかみやすいと思います。同センターは国土交通大臣の登録に基づいて適合性判定員を養成する講習を実施しています。
単に建築士資格を持っているから合格できるというものではなく、省エネ基準や適判実務について理解したうえで受験することが重要です。逆に、省エネ計算を日常的に行っている建築士や設備設計者であれば、普段扱っている内容と重なる部分も多いため、実務経験を活かしやすい資格といえます。
2026年度の受講料や講習方式は?
2026年度第1回の講習について、国土交通省は2026年7月7日に開催概要を公表しています。講習A~C共通で受講料は58,300円(税込)、講義・修了考査ともオンライン方式です。講義は動画を視聴し、修了考査もパソコンを利用して受験する仕組みとなっています。定員は講習A~C全体で900名です。
2026年度第1回では、講義期間が2026年10月14日から10月27日、修了考査が10月29日に設定されています。申込受付はすでに2026年8月4日に終了していますので、これから資格取得を検討する場合には次回開催について一般財団法人住宅・建築SDGs推進センターの案内を確認する必要があります。
開催日、受講料、実施方式については年度や開催回によって変更される可能性がありますので、実際に申し込む際には必ず最新の講習案内書を確認してください。
講習を修了すれば個人で省エネ適判を請け負えるわけではありません
ここは特に誤解されやすいところなので、資格取得を考えている方には知っておいていただきたいポイントです。
登録適合性判定員講習を修了すると、適合性判定員として必要な資格要件を満たすことになります。しかし、その資格を使って個人が設計事務所から直接「省エネ適判をします」と案件を受注できるという制度ではありません。
建築物省エネ法では、登録建築物エネルギー消費性能判定機関が、国土交通省令で定められた要件を備える者の中から適合性判定員を選任する仕組みになっています。また、判定機関の登録簿には適合性判定員の氏名なども登録事項として扱われます。つまり、実際の省エネ適判は登録判定機関や所管行政庁の判定業務として実施されるものであり、その中で適合性判定員が審査を担当します。
「省エネ計算を行う実務者」と「省エネ適判を行う判定員」は似ているようで立場が異なります。省エネ計算の代行会社は申請者側として計算書や申請図書を作成しますが、判定員はそれを審査する側です。公正な判定を行う必要があるため、この二つの立場はしっかり分けて理解する必要があります。
省エネ計算実務者にとって判定員資格を取得するメリットは?
省エネ計算を仕事にしている方にとって、適合性判定員講習を受けるメリットは、単に転職先や業務の選択肢を増やせることだけではないと思います。判定側の考え方を学べること自体が、省エネ計算実務にも役立ちます。
省エネ適判でよく問題になるのは、単純な計算ミスだけではありません。図面に記載されている設備仕様と計算書に入力された仕様が違う、空調機の能力や効率が図面と一致していない、照明器具の数量が違う、外皮の拾い方に根拠がないといった「図面と計算の整合性」が非常に重要です。
計算する側では「BEIが基準を満たしたから大丈夫」と考えてしまいがちですが、判定側では、その数字がどのような根拠で算出されたのかまで確認します。判定員として必要な知識を学ぶことは、申請者側として質疑の少ない省エネ計算書を作るうえでも役立つでしょう。
2025年以降、省エネ適判の知識はさらに重要になっています
2025年4月から原則すべての新築住宅・建築物について省エネ基準への適合が義務付けられたことで、省エネ計算や省エネ適判は一部の大規模建築物だけの話ではなくなりました。戸建住宅、小規模な店舗や事務所、共同住宅などでも、省エネ基準への対応が建築確認と密接に関係するようになっています。
さらに2026年度からは新築の中規模非住宅建築物について省エネ基準が引き上げられており、2026年度の判定員講習もその変更に対応した内容になっています。つまり、省エネ適判を取り巻く制度は現在も動いており、数年前に覚えた知識だけでは対応しにくくなっています。
設計者、省エネ計算実務者、確認審査業務に関わる方にとって、省エネ基準や判定方法を継続的に学ぶ重要性は今後さらに高まっていくと考えています。
省エネ適判に提出する計算書作成・申請対応ならコタエルへご相談ください
ここまで紹介した「適合性判定員」は省エネ計画を審査する側ですが、コタエルでは設計事務所・建設会社など申請者側の立場で、省エネ計算や省エネ適判に必要な書類作成、申請対応などの外注相談を受け付けています。
「省エネ適判が必要だが社内で計算できる担当者がいない」「WEBPROの入力まで手が回らない」「共同住宅や非住宅の省エネ計算をまとめて外注したい」「確認申請のスケジュールが迫っているので適判まで対応してほしい」といった案件もご相談ください。
コタエルでは、建物用途、延べ面積、構造、計算方法、申請内容などを確認したうえで、案件に対応できる省エネ計算の実務者・専門家への見積もり相談が可能です。平面図、立面図、断面図、建具表、仕上表、設備図、機器表など、現在お持ちの資料をお送りいただければ、必要な業務範囲を確認したうえでお見積もりをご案内します。省エネ適判の申請業務を社内だけで抱え込まず、省エネ計算や申請対応を外注したい設計事務所・建築会社の方は、コタエルへお気軽に見積もりをご依頼ください。

