住宅の引渡し後に書類を整理していて、
「設計住宅性能評価書はあるけれど、建設住宅性能評価書がない」
「住宅性能評価を取得していると聞いていたのに、建設住宅性能評価書をもらっていない」
「施主から建設住宅性能評価書を求められたが、手元に見当たらない」
ということがあります。
設計事務所や工務店の立場でも、この相談を受けると少し判断に迷うところです。
ただ、最初に整理しておきたいのは、建設住宅性能評価書は、住宅が完成したら自動的に発行される書類ではないということです。
住宅性能表示制度は任意の制度であり、登録住宅性能評価機関へ申請し、所定の評価・検査を受けた住宅について住宅性能評価書が交付されます。国土交通省によると、住宅性能評価書には設計図書を評価する「設計住宅性能評価書」と、施工段階・完成段階の検査を経て交付される「建設住宅性能評価書」があります。
したがって「ない」「もらっていない」という場合は、まず本当に取得していた住宅なのか、それとも設計住宅性能評価までしか取得していなかったのかを切り分ける必要があります。
【住宅性能評価に関する情報はこちら】
https://cotaeru.tokyo/housing_performance_evaluation【実績はこちら】
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そもそも建設住宅性能評価書とは?
建設住宅性能評価書は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」、いわゆる品確法に基づく住宅性能表示制度によって交付される評価書です。
国土交通大臣の登録を受けた登録住宅性能評価機関が申請に基づいて評価を行い、施工段階と完成段階の検査結果を踏まえて交付します。設計図面だけを審査するものではなく、実際の施工が評価を受けた設計内容に沿っているかを確認する点が大きな特徴です。
まずは2つの評価書の違いを整理しておきましょう。
| 書類 | 主な評価時期 | 主な確認内容 | 現場検査 |
|---|---|---|---|
| 設計住宅性能評価書 | 設計段階 | 設計図書上の住宅性能 | なし |
| 建設住宅性能評価書 | 施工・完成段階 | 評価された設計に沿って施工されているか | あり |
| 既存住宅に係る建設住宅性能評価書 | 既存住宅 | 現況検査、申請した性能項目等 | 現況検査あり |
国土交通省の最新ガイドでも、設計図書の評価から設計住宅性能評価書が交付され、その後、施工段階・完成段階の検査を経て建設住宅性能評価書が交付される流れが示されています。
つまり、設計住宅性能評価書を持っているからといって、必ず建設住宅性能評価書も存在するわけではありません。
ここを最初に確認するのが大切です。
建設住宅性能評価書がない代表的な理由
「評価書がない」という相談では、原因を一つずつ切り分けていくと案外早く解決します。
実務上は次のようなケースが考えられます。
| 状況 | 考えられる理由 | まず行うこと |
| 設計住宅性能評価書だけある | 建設住宅性能評価を申請していない | 当時の申請内容を確認 |
| 評価書が一切ない | 住宅性能表示制度を利用していない | 契約書・仕様書を確認 |
| 建設評価を受けたはずだが手元にない | 施工会社・売主側で保管している可能性 | 施工会社等へ確認 |
| 評価書を以前見た記憶がある | 紛失の可能性 | 評価機関を特定して相談 |
| 工事中の検査を一部受けていない | 建設評価が完了していない可能性 | 評価機関へ進捗確認 |
| 評価申請を途中で取り下げている | 評価書自体が発行されていない | 申請履歴を確認 |
住宅性能表示制度は任意であるため、建築確認済証や検査済証のように、住宅を建築すれば当然に建設住宅性能評価書が存在するという制度ではありません。
そのため、「新築住宅なのに建設住宅性能評価書がない」というだけで、直ちに施工会社や設計者の手続き漏れと判断するのは早いでしょう。
一番多いのは「設計住宅性能評価書」との勘違い
私たちがこの手の相談を見るとき、まず確認したいのが書類の名称です。
表紙に、
「設計住宅性能評価書」と書いてあるのか、
「建設住宅性能評価書」と書いてあるのか。
名前は似ていますが、意味はかなり違います。
住宅性能評価・表示協会も、設計評価については「設計段階の図面によるチェック」、建設評価については「建設工事・完成段階の検査」と明確に分けています。
例えば設計段階で耐震等級3、断熱等性能等級6などの評価を受けて設計住宅性能評価書を取得していても、その後に建設住宅性能評価を申請し、必要な検査を経ていなければ、新築住宅に係る建設住宅性能評価書が当然に交付されるわけではありません。住宅性能評価は所定の評価方法に従って行われます。
設計事務所側としても、施主へ説明するときは「住宅性能評価を取っています」だけでは少し曖昧です。
「設計評価まで取得するのか」
「建設評価まで取得するのか」
まで契約や業務範囲に明記しておくと、引渡し後の認識違いを防ぎやすくなります。
建設住宅性能評価書が「もらってない」ときに最初に確認するもの
施主から「建設住宅性能評価書をもらっていません」と言われた場合、いきなり再発行の話をするのではなく、まず取得履歴を確認します。
確認したい資料は次のようなものです。
| 確認資料 | 確認するポイント |
| 設計住宅性能評価書 | 登録住宅性能評価機関名・評価番号 |
| 売買契約書 | 住宅性能評価に関する記載 |
| 工事請負契約書 | 建設住宅性能評価取得の契約があるか |
| 仕様書 | 耐震等級・断熱等級等の記載 |
| 引渡し書類一覧 | 性能評価書が含まれていたか |
| 現場検査関係資料 | 建設住宅性能評価の検査履歴 |
| 評価機関からの通知書 | 建設評価の申請・検査状況 |
特に設計住宅性能評価書が残っていれば、そこに記載された登録住宅性能評価機関を手掛かりに確認を進めやすくなります。
住宅性能評価は登録住宅性能評価機関が申請に基づいて実施する制度であり、国土交通省では登録機関の情報を公開しています。住宅性能評価・表示協会でも評価機関を検索できます。
施工会社や売主が持っている可能性もある
もう一つ整理しておきたいのが、「評価書が存在しない」のか「所有者の手元にないだけ」なのかという違いです。
住宅性能評価は、法律上、申請者が必ず住宅所有者本人でなければならない制度ではありません。住宅性能評価・表示協会も、申請自体は法律上誰が行っても構わないと説明しています。
そのため、分譲住宅などでは売主や事業者側が評価手続きを行っていることもあります。
まず施工会社、工務店、ハウスメーカー、売主などに、
「この住宅について建設住宅性能評価は取得していますか」
「建設住宅性能評価書の交付番号と評価機関を教えてください」
と確認するのが現実的です。ここで評価番号と評価機関が確認できれば、「評価書が存在しない」のか「単に手元にない」のかをかなり絞り込めます。
建設住宅性能評価書を紛失した場合はどうする?
以前は持っていたものの、引っ越しや書類整理などで紛失してしまうケースもあります。
この場合は、まず評価書を交付した登録住宅性能評価機関へ問い合わせるのが基本です。
再交付や証明等の具体的な取扱い、必要書類、手数料などは評価機関によって確認する必要があります。住宅性能評価の料金についても評価機関ごとに設定されているため、元の評価機関が判明している場合は直接確認するのが確実です。評価機関が分からない場合は、設計住宅性能評価書、工事請負契約書、売買契約関係書類、施工会社の保管資料などから探します。建築確認を行った確認検査機関と、住宅性能評価を行った登録住宅性能評価機関が必ず同じとは限らない点にも注意が必要です。
建設住宅性能評価書は完成後からでも新しく取れる?
ここは設計者からも質問されやすいところです。
結論から言うと、新築時の建設住宅性能評価を、住宅完成後に図面だけ提出してそのまま遡って取得する、という考え方はできません。
新築住宅の建設住宅性能評価は、施工段階と完成段階の検査を経て行う制度だからです。国土交通省のガイドでも「設計住宅性能評価→施工段階・完成段階の検査→建設住宅性能評価書」という流れになっています。
例えば3階建て以下の住宅について、国土交通省の制度資料では、基礎配筋工事の完了時、躯体工事の完了時、下地張り直前の工事完了時、竣工時といった施工途中を含む検査時期が設定されています。
基礎や構造躯体、下地などは住宅完成後には隠れてしまいます。
したがって、
「完成したので、今から新築時と同じ建設住宅性能評価書を取ってください」
という依頼については、当初の申請状況や検査履歴を確認したうえで登録住宅性能評価機関と協議する必要があります。完成後だから単純に申請書を作ればよい、という業務ではありません。
すでに完成している住宅には「既存住宅の住宅性能表示制度」もある
では、新築時に建設住宅性能評価を取らなかった住宅は、二度と住宅性能評価を受けられないのでしょうか。
そうではありません。
住宅性能表示制度には、新築住宅だけでなく既存住宅を対象とした住宅性能評価制度があります。国土交通省は現在も、新築住宅用と既存住宅用の住宅性能表示制度を分けて案内しています。
既存住宅についても登録住宅性能評価機関へ申請し、現況検査や性能評価を受けることで、既存住宅に係る建設住宅性能評価書の交付を受ける仕組みがあります。
ただし、これは新築時に施工途中から検査を受けて取得する建設住宅性能評価と全く同じ意味ではありません。
| ケース | 考えられる対応 |
| 新築時に建設評価を取得済み・書類紛失 | 元の評価機関へ確認 |
| 建設評価を申請済み・評価途中 | 元の評価機関へ進捗確認 |
| 設計評価のみ取得 | 新築時の建設評価の状況を確認 |
| 完成済みで新築時に建設評価を取得していない | 既存住宅性能評価を検討 |
| 特定の性能だけ証明したい | 必要な制度・証明書を別途検討 |
「建設住宅性能評価書が必要」という相談を受けた際は、何のために必要なのかまで確認することが重要です。
住宅ローン減税のために必要と言われた場合は要注意
最近は「税務署から住宅性能を証明する書類を求められた」という理由で、評価書を探しているケースもあります。
国土交通省の住宅ローン減税Q&Aでは、対象住宅の省エネ性能を証明する書類として、条件を満たす「建設住宅性能評価書の写し」または「住宅省エネルギー性能証明書」が用いられるケースが示されています。BELSやフラット35の適合証明書については、住宅ローン減税の性能証明書としてそのまま使用できない場合があることも明記されています。
つまり、
「建設住宅性能評価書がない=住宅ローン減税を受けられない」
と直結するわけではありません。
目的によっては住宅省エネルギー性能証明書など、別の証明方法を検討できる可能性があります。国土交通省は、一定の場合について住宅省エネルギー性能証明書を登録住宅性能評価機関等のほか、建築士事務所に所属する建築士が発行できる制度を案内しています。
ここは「何の書類がないのか」だけではなく、「何に使うための書類なのか」を確認するのがポイントです。
建設住宅性能評価書があることのメリット
では、建設住宅性能評価まで取得する意味はどこにあるのでしょうか。
一番分かりやすいのは、設計上の性能だけではなく、施工段階・完成段階まで第三者機関の検査が入ることです。
また、建設住宅性能評価書が交付された住宅については、指定住宅紛争処理機関による紛争処理制度を利用できます。住宅性能評価・表示協会によれば、評価書に記載された性能だけでなく、請負契約や売買契約を含む住宅に関する当事者間の紛争について利用でき、申請手数料は1件1万円とされています。
さらに、住宅性能表示住宅については、評価された耐震等級等に応じて地震保険料の割引を受けられる場合があります。
| メリット | 内容 |
| 第三者による評価 | 登録住宅性能評価機関が評価 |
| 施工段階の確認 | 設計どおり施工されているかを確認 |
| 性能を客観的に表示 | 共通基準により等級等で評価 |
| 紛争処理制度 | 建設評価住宅は指定住宅紛争処理機関を利用可能 |
| 地震保険 | 耐震性能等に応じ割引対象となる場合がある |
| 各種制度の証明 | 条件を満たせば税制等で証明書として利用できる場合がある |
設計住宅性能評価だけで終わらせるか、建設住宅性能評価まで取得するかは、こうしたメリットも含めて建築主へ説明した方がよいでしょう。
設計事務所側で注意したい「取得すると思っていた」のトラブル
設計実務で一番避けたいのは、住宅が完成してから施主に、
「建設住宅性能評価書はいつもらえますか?」と聞かれ、
「建設評価は依頼されていません」となるケースです。
住宅性能評価制度には設計評価と建設評価がありますので、業務委託契約書や見積書では、
「設計住宅性能評価申請」
「建設住宅性能評価申請」
を可能な限り分けて記載した方が分かりやすいでしょう。
特に「住宅性能評価申請 一式」という書き方は、専門家同士では意味が通じても、建築主から見ればどこまで含まれているのか判断できません。
建設評価では施工中の検査スケジュールとの調整も必要です。
着工してかなり工事が進んでから「やはり建設評価も取得したい」と言われると、すでに確認できない工程が出てくる可能性があります。新築住宅の建設評価には施工途中を含む所定の検査工程が設定されているため、設計段階から申請範囲を決めておくことが重要です。
「ない」と分かったら、この順番で確認すると早い
建設住宅性能評価書が見当たらない案件では、次の順番で整理すると比較的スムーズです。
まず「設計住宅性能評価書」があるか確認します。
次に、工事請負契約書や売買契約書、見積書などを確認し、建設住宅性能評価を取得する契約だったかを調べます。
そのうえで施工会社や売主に、建設評価の申請有無、評価機関名、評価番号、検査実施状況を確認します。取得済みであれば評価機関へ書類の取扱いを問い合わせ、そもそも取得していなければ、「なぜ今必要なのか」を確認して別の方法を検討します。
設計者としては、この最後の部分がかなり大事です。
・住宅ローン減税のためなのか。
・耐震性能を証明したいのか。
・住宅の売却に使いたいのか。
・地震保険のためなのか。
・単純に住宅性能を確認したいのか。
目的によって必要な書類は変わります。
「建設住宅性能評価書を取ること」が目的なのではなく、「何を証明したいのか」を先に整理する。
これだけで、余計な申請や手戻りをかなり減らせます。
建設住宅性能評価書がないからといって慌てる必要はない
最後にまとめます。
建設住宅性能評価書が手元にない場合、
「取得していたが書類がない」のか、
「設計評価だけ取得していた」のか、
「住宅性能表示制度そのものを利用していなかった」のか。
まずこの3つを切り分けることが大切です。
建設住宅性能評価書は住宅完成時に自動交付される書類ではありません。登録住宅性能評価機関へ申請し、施工・完成段階の検査を経て交付されるものです。
一方で、新築時に建設評価を取得していなかったからといって、何もできないとは限りません。
既存住宅の住宅性能表示制度や、必要とする証明内容によっては別の証明制度を利用できる可能性があります。
だからこそ、「評価書がない」と分かった時点でいきなり申請を始めるのではなく、既存資料と取得目的を整理することが第一歩になります。
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住宅性能評価は、設計住宅性能評価だけでなく、建設住宅性能評価まで取得する場合には、申請図書の作成、評価機関とのやり取り、施工段階での検査調整、質疑対応などが発生します。
特に、
「住宅性能評価の申請業務だけ外注したい」
「設計住宅性能評価と建設住宅性能評価をまとめて依頼したい」
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